ことば

COLUMN

ハモニカの味 第6回「二〇〇一年・妄想旅行」

現在、SABU監督最新映画「DRIVE」の撮影中。

ここは、富山県高岡市。初めて訪れるロケ地、路面電車も走ってる味わいの町なんだ。

 

今日は、台本にして二〇ページ。約一五〇カットを撮らなければならないという大変な日だ。

そんな日に限って、なんとこの「音楽と人」の締め切りが迫っているなんて……。連載っていっても一ヵ月に一回だから、なるべく早めに書けばいいのだろうけど、そこはそれ、なかなか思い通りにはいかない。控え室にノートパソコンまで持ち込んで、とりあえず〈やる気・書く気〉だけはあるのだが……。

 

「ヨーン、今日だけは共演者と大好きな〈無駄話〉はしないぞ! そして書くのだ」

ぼくは、以前からこの種の〈小さな決意表明〉をどうやら好んでいるようだ。有言そして実行あるのみ……書こうと思った、まさにその時だ。

「漣さん、います?」

寺島進さんだった。

「あれ、なになにパソコン……またぁ! エッチサイトでも覗くつもりなんでしょ。ひとりでズルイな」

「いや、ぼくはその……原稿をね……書こうと思って。締め切りがさ……」

「オーイみんな! 漣さんがひとりでさ……楽しんじゃってるんだよぉ」

あぁ、その声を聞きつけた共演者が、ゾロゾロ集まってきてしまったではないか。

「あっ、パソコンか。見たいサイトがあるんですよ」

松尾スズキさんが、犯罪者のようなつぶらな眼でぼくに向かって懇願している。

「いや、だから今、あの……原稿をね……締め切りがさ」

「締め切り? 大杉さん! 何を云ってるんですか! ぼくは連載を七本やってるんですよ。大丈夫大丈夫」

「エッなに、七本!」

一本で四苦八苦しているぼくってナンダ……そして、松尾さんがこう言い放った。

「取りあえずソープランドからいってみましょうか」

そして……。

こんなはずじゃなかったが、禁断の扉は、開かれてしまった。ぼくたちの疑似体験ソープランドツアーの始まりだ。

北は札幌・ススキノから南は九州・博多まで……あどけないオジサンたちの〈妄想の旅〉はしばしの間続いた。

「じゃあさ、次はどこのサイト覗こうか」

「いや、漣さん、もうたっぷり見たからいいですよ。原稿書いてください」

「え、なに云ってんの! そりゃあないでしょ。ドンドンいってみよう!」

 

小さな決意表明どこ吹く風、旅の引率者は、明らかにぼくだった。本末転倒ここにあり。

結果、「音楽と人」の原稿はどうなったのだぁ!!!

 

・「音楽と人」2001年11月号掲載