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COLUMN

俳優・大杉漣が選ぶ② あの映画のこのシーン『竜二』

女性誌で″ヤクザ映画″なんて…と思わないでいただきたい。

『竜二』はそれ以後の日本映画に大きな影響を与えた作品だと、僕は考えている。

誇張されたヤクザ映画は沢山あるが、『竜二』は″何でもない日常″を過ごすのがいかに困難なことなのかを描いている<家庭劇>だからだ。

ヤクザから足を洗い酒屋の店員としてやり直そうとする竜二(金子正次)は、安アパートで親子3人つつましく暮らし始めるが、″平凡″を繰り返す毎日に耐えられなくなってしまう。

アパートの窓辺でつぶやく「この窓からは何も見えねえなぁ」。

溜まり始めた行き場のない思いは、ラストでついに結論を出す。

竜二は酒屋を辞めてしまいアパートに帰る途中、商店街の大安売りに並ぶ女房(永島暎子)と子供(もも)に出会うが、逆行してしまう。

その姿を見る永島暎子さんの哀しみ、あきらめ、許しが混ざった眼。

その表情がこの映画のすべてを決めた。

 

・小学館「ドマーニ」2000年5月号掲載

 

『竜二 Blu-ray デジタルリマスター版』

監督:川島透

脚本:鈴木明夫(金子正次)

出演:金子正次、永島暎子、佐藤金造(桜 金造)

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