ことば

COLUMN

俳優・大杉漣が選ぶ④ あの映画のこのシーン『ソナチネ』

1992年・ぼくは、初めて北野武監督作品に出演した。

渡された台本にはタイトルがなく、ただ「北野武作品 VOL.4」と示されているだけだった。

今まで経験していた台本とはまったく様相も異なり、セリフがほとんど書き込まれておらず、結末さえわからない状態だった。

ぼく自身、前半の東京編だけで出演を終える予定が、大幅な台本変更により最後の沖縄編まで出演することになったのだ。

まさにロードムービー!

ヤクザの抗争を描いた映画はたくさんあるが、ヤクザの″弛緩された日常″を映し出す作品は少ない。

沖縄の狂おしい空と海の音を背景に、何もすることがないヤクザたちが、紙相撲や花火合戦に興じるオマヌケな姿に、愛を感じる。

ぼくにとってこの作品そのものが、心に残るワンシーンとなったのだ。

おおげさを許していただければ、この出会いがあったからこそ、ぼくは今でも俳優を続けているのかもしれない。

(後にこの作品は「Sonatine」と名付けられた)。

 

・小学館「ドマーニ」2000年12月号掲載

 

『ソナチネ』Blu-ray

監督・脚本・編集:北野 武

出演:ビートたけし/国舞亜矢/渡辺 哲/勝村政信/寺島 進/大杉 漣/逗子とんぼ/矢島健一/南方英二 他

発売元:バンダイナムコアーツ https://www.bandaivisual.co.jp/cont/item/BCXJ-1271/