ことば

COLUMN

第41回 「決定の夜」

〈映画とテレビの演技の違いは、どこにあるのか!〉

今月はこんなテーマで書いてみようかなぁと考えていたのですが……。

イヤイヤどうしても我慢できないのだ! 申し訳ないが、今月このことを書いておかないと必ず後悔する、そう断言できるのだ。こんなに浮き足立っているオイラがいるのに「ええ、ぼくは冷静ですよぉ」なんて顔は出来ない……そりぁ無理無理。よって予定変更、今回はこのことを書きます。

 

〈サッカー日本代表2006年ドイツW杯出場決定!〉

決定!決定!決定!決定!決定!出場決定!このまま最後まで〈決定!〉という文字で埋め尽くしたいくらいだ!

 

思えば今年二月、アジア最終予選ラウンド・VS北朝鮮戦。

俳優・陣内孝則さん宅における総勢50人のサッカー大観戦パーティーがあった。番組の中打ち上げとその日の試合がぶつかったということもありヴォルテージ計測不能。陣内宅は〈小さな国立競技場〉と化していたのだ。引き分けかと思っていた終了寸前の大黒選手のシュートが決まった瞬間……嗚呼! 陣内宅は大きく揺れていた……オイオイここは個人の家なんだ、イヤァそんなこと誰も気遣う奴などいるわけない! わけがないだろ!! 陣内さんには大変申し訳なかったが、沸き起こる50人でのニッポンコール! ハイタッチ! そして熱き抱擁! 国仲涼子さん(「ちゅらさん」のがんばってコールはとてもかわいかった!)も瑛太君(彼はサッカーがうまい。わが鰯クラブにもMFで参加!)も風吹ジュンさん(とてもサッカーに詳しい。こっそり書いておくとDFの宮本選手の大ファンなのだ!)も……見たこともない笑顔がそこにはあった。

 

そして六月八日。

いよいよその日はやってきた。もし今日勝てば日本の三大会連続のW杯出場が決まるという大切な日。あの日と同じVS北朝鮮戦。FIFA裁定のタイ・バンコクでの無観客試合。

その日は仕事だったが幸運にも試合はライヴで観ることが出来る、サッカーに限らないが、ライヴに勝るものはなし。イヤァだからって仕事は仕事ですから、手につかないなんて甘いことを言ってはいけない……と思いつつ、なるべく試合のことは考えないように仕事が手につくよう努力をした。しかし、手についても今度は明らかに足が地に着いていない。そりぁ仕方ないよね。面識のない人からも声を掛けられ「いよいよ今日ですねぇ、応援がんばりましょうね!」なんてお互いの決意を確認しあうような奇妙な連帯感。中には仕事場に12番の代表ユニフォームを着ている人もいた。そして次々に掛かってくる友人からの電話。オイラだけじゃあない、みんなそうなんだよな、落ち着かないんだ。落ち着かないよ、そりぁ……落ち着けるわけがない!

「ああ、漣さん? 風吹です。漣さん今日はどこで観ます? 二月の陣内さん家のあの感動が忘れられないというか……ねっ」

「ねぇジュンさん、よかったら家で一緒に観ませんか!」

「えっ、行く行く! 娘も一緒にいいかなぁ……じゃあ後で!」

「もしもし、堀尾(ギタリスト)ですが、漣さん今日試合観ます? えっ、一緒に……じゃあ後で!」

「あっ、漣さん。高橋(監督)です。今日の試合? ……じゃあ後で!」

ということで結局総勢11人のわが家でのサッカー観戦とあいなった。

結果はもう皆さんもご存知の通り〈日本完勝!〉そして〈W杯出場決定!〉となった。ぼくの大好きな柳沢選手のゴールも久しぶりに見ることが出来たんだ!

 

無邪気な11の笑顔がそこにある。

「じゃあ飲みますか!」

これ以上ない文句なしの勝利の宴。わが〈鰯クラブ〉のイレブンからも興奮冷めやらぬ電話が入る。

「やりましたね、おめでとうございます! 漣さん今日はカラオケ店に鰯イレブンは集まって観てたんですよぉ」

「ねぇねぇ、よかったらこれから家に来ない、一緒に飲みましょう! ……じゃあ後で!」

鰯クラブのメンバーも加わり11の笑顔が20に増えた。とにかく飲んで語った。堀尾和孝さんの即興ライヴも始まり心地よい時間流れた。

こんなに普通にサッカーのことが語れる時代が来るなんて考えてもいなかった。W杯なんて他所の国の出来事だと思っていた。

そしてオイラ、来年ドイツに行く!

 

「いやぁ、勝ってよかったねぇ! 眠いんだけどよ、ずっと観てんだよぉ!」

後日、現場で久しぶりにお会いした泉谷しげるさんの開口一番だ。〈泉谷しげる・サッカーを語る!〉なんて想像もしていなかった。撮影の空き時間、泉谷さんとオイラ、サッカー談義で盛り上がった。深夜の試合中継のため実際自分はどれだけ睡眠不足をしているか、興味のない方にはどうでもいいような、そんなことを競い合うおっさん二人がそこにいた。

 

「音楽と人」2005年8月号掲載