ことば

COLUMN

第62回「秘密基地」

桜は咲いていいのか、今は咲くべきではないのか、桜自身が悩んでしまうおかしな天気。

そんなことも長く続けば、それ自体が〈日常〉になってしまう恐ろしさ。

さてさて、読者の皆さまは花粉症なんぞに侵されずにお元気でお過ごしでしょうか。

大杉、今年はギャフンとやられとります! つらいっす!

先日のドラマ撮影時など大事なシーンにもかかわらず、ヘリウム吸引の如く超鼻声!

忌々しい季節を呪っとるわけです。

いつからオイラはこんなデリケートな現代人になってしまったのかぁ!

挙句の果ては大杉の〈杉〉の字がきっと良くないんだ、なんて思ってしまう情けなさ。

ホトホト勘弁して下さいの季節なのである。

 

しからば本題に入ります。

以前新聞の取材でこう発言したことがある。

「大杉さんの将来の夢は?」と問われ、「はい、出来れば自分たちのサッカー場を持つことです」と答えた。

驚くことにその発言への反響はすぐさまあった。

全国各地から物件情報が事務所に届いたのだ。

勿論そんな高額なものが簡単に買える身分でもないのは重々承知である。

その中にはやばそうな訳あり物件もあったりで、やはり公共では軽々しく〈将来の夢〉なんて語っちゃあいけないんだと痛感したのだった。

 

今まで何度も書いているのだが、ぼくはサッカーが好きだ。

もちろん観ることも好きだが、やる方がもっともっと好きだ。

そして現在ぼくは〈鰯クラブ〉という草サッカーチームに所属している。

鰯クラブは創立17年を迎え、それなりの歴史があるチームだと自負もしている。創立当時若かったイレブンもすっかり中年になってしまった。引き締まっていたはずの身体には加齢と共にメタボリックの波が押し寄せた。それでも創立メンバーのほとんどは、打ちひしがれたイタイケな気持ちをバネに現在もプレーを続けている。今ではその子供たちもチームに合流し、親子二代に渡るサッカーチームになっているのだ。

そんなやる気満々のわがチームに去年の春、大きな問題が沸き起こったのだ。

そう、それまでホームグランドとしてきた場所が突如なくなってしまったのだ!

ご存知の方も多いと思うが、日本のサッカーグランド面数は非常に少ない。東京にある主なるグランドもそのほとんどが申し込み抽選となり、当たる確率も非常に低いのである。Jリーグ以降のサッカーブームもあり、チーム数も増えている。にもかかわらずサッカーグランド面数はそれほど増えていない。チームを創ったはいいが肝心のグランドが取れない、それが現状なのだ。

現在、鰯クラブはジプシーのように東京近郊のサッカー場をうろついているのだ。

きっかけは、単純明快だった。サッカーを好きな時に思う存分やりたい!

将来の夢を語ったあの時の事が、また動き始めた……そう、ぼくたちのサッカー場!

「ねぇ、探そうよ。東京から少し離れた場所でもいいじゃない。無理もせず自分たちの身の丈にあった場所にさ、ぼくたちのサッカー場を自分たちで作ろうよ!」

夢に向かって歩くことは、ものすごく楽しいことだった。

〈理屈を言う前に動け!〉なんだか教訓じみた言葉も吐いてみた。

雑誌やインターネットで睡眠を惜しみ、深夜に及ぶまであらゆる関東地方の土地情報に目を通した。しかし、残念ながらサッカー場の広さを求めるのは物理的に諦めざるをえなかった。

「じゃあ、フットサル場にしようよ。そこに部室も作って寝泊り出来るように……」

「だったら卓球台とかダーツとか置いて……飯炊いて雑魚寝して……」

メタボリックなおじさんたちの勝手な妄想は、限りなく宇宙まで拡がる勢いだった。

 

これは自慢話ではないのだ。

そんな無駄なことはやめなさいとか、老後を考えたらお金残しておいた方がいいという人もいた。正論だとは思う。しかし、今これをやらないと一生酒の肴として語るだけの夢に終わってしまう。

多少の馬鹿は承知の上、もちろん金銭的にも負担はあるが、ぼくたちは自分たちの場所が欲しかったのだ。それは心の場所と言ってもいいのかもしれない。仕事を離れた大人の秘密基地……。

 

関東近郊、某所。

先日、鰯クラブのイレブンと荒地の石っころを拾いに行った。みんな子供のようにはしゃいでいた。近所のコンビニで弁当を買って来てみんなで食った。普段より美味く感じた。

近くに温泉もあるらしい。そう遠くない将来、鰯クラブのささやかな〈フィールド・オブ・ドリームス〉が完成する予定だ。

今、ぼくたちは無邪気にワクワクドキドキしているところなのだ。

 

〈追伸〉

2007年4月2日より大杉漣の所属事務所が変わりました。

新しい事務所は〈(株)ZACCO ザッコ〉です。雑魚たちの集団という意味あいです。

今まで以上にボチボチ激しく俳優でありたいと考えています。

今後ともよろしくお願いいたします。             れん

「音楽と人」2007年5月号掲載