ことば

COLUMN

第89回「小便とライヴ」

夜中に目が覚める

夢にうなされた訳ではない

小便だぁ

以前はこんなことはなかったのに

半覚半睡のまま ベッドから便所へ

たゆたうような15歩だけの散歩

面倒だが行くしかないのだ

 

寝静まった深夜の一畳間

犬の遠吠えすら 今夜聞こえない

57歳の男は便器に腰かけ

これからの自分ってやつを考え始めちまった

小便だけの時間なのに

オイオイどうしたって言うんだよ

小さな声で〈人生〉なんてつぶやき始めてるぞ

 

水洗レバーで水を流すのは

エチケットに反することなんだ

その音で家族で目覚めたら

そう たかが小便されど小便

これから経験するであろう後輩たちにお教えしよう

夜中の散歩ってやつは気を張っとけぇ!

レバーに手をかけ 少しだけ水を流す

そんな高度なテクニックを身につけた俺

〈音を立てずに小便流せます〉

なんてプロフィールに書き添えるかどうか 悩みどころだぜい

ああっ俺 もう夜中の散歩で遊び始めてる

夜中に小便 気持ちが徘徊

ホラホラもうすぐ朝になっちまう

 

のっけから小便の話なんて……なんでこんな書き出しになってしまったぁぁぁ!?

別に深刻なことでもないんだ。人が老いていくとはこういうことなのだ。

さてさて小便の後はなにを書けばいいのだろうか。

無茶振り承知で……そうそうちょっと嬉しいライヴが二つ決まったのだ。

先月号で書いたNHK『鶴瓶の家族に乾杯』で訪れた徳島県美馬市脇町(今月二週にわたり放映予定)。

その小さな町にある古くて趣深い芝居小屋&映画・オデオン座!

オイラの故郷にこんな素敵な場所があったなんて……ほんと驚きと感動でした。

この国の高度成長期、ここにはあふれんばかりの観客が押し寄せていたらしい。

現在は不定期にイベントをやりつつ建物を保存・運営されているらしい。本当に読者のみなさんにも実際見ていただきたいくらいシビれる&イカした空間(表現は古いがそういうことだ、ご理解を願う!)。

そこに初めて足を踏み入れた途端……オオっ俺はここで唄いたい!!と思ったのだ。

速効ぼくの気持ちを運営スタッフに伝えることにした、そして……快諾だった。

10月24日(土)徳島県脇町・オデオン座でぼくはライヴします。

そしてもう一本。

これは『音楽と人』の編集者である樋口さんから……樋口さんとのお付き合いもかなり長い。初めから現在までずっと担当は変わることなく樋口さんだった。

音楽には素人のオイラの徳島ライヴにも東京から駆けつけてくれたこともある。芝居小屋でバッタリお会いしたこともある。かわいい犬を飼われていることも知っている、そして、ご家族が増えたことも知っているし、毎月毎号膨大な取材や原稿をこなしていることも知っている。いつ電話しても心地よく応対していることに感謝もしている。笑いながら明るく変態のような言葉をさらっと吐く彼がいるのも知っている……そんな樋口さんから声をかけていただいたのだ。

7月30日(木)逗子海岸・音霊SEA STUDIO 2009で唄うことになった。このイベントは今年で五年目、参加されるアーティストを見たら、いやぁ凄えぇメンバーで、オイラなんてノコノコ出て行っていいのかよぉ……って思ったくらいなんだ。

オイラはオイラで本業のほうもかなりタイトな日々だというのに、なぜ無理を承知でこんなことになってしまうのか。

それはね、楽しいからなんだよぉ!!

太宰 治も言っていたぞ……目標があるということはそこまで生きたいということなんだと。

後日、小便話を柄本 明さんにしたら……そうかそうか漣ちゃんも来たんだ……と嬉しそうにうなずいていた。間違いなく彼は、ぼくの先輩だ!

 

「音楽と人」2009年8月号掲載