2010年を迎えて、加速するがごとくトットトットと時間が過ぎていく。
すべての感覚が年々遅く鈍くなっているにもかかわらず、どうやら時間だけは特別のようだ。
オーイみんなぁ、元気にやってるかい!?
なんて、たまにはまだ見ぬ読者の皆さんに声をかけてみたくもなるってもんだぁ!
アントニオ猪木はいいところを突いている……やっぱり元気が一番!
オイラは今年どんな過ごし方をするのだろう。
日々小さな不安を抱きつつ、相も変わらぬ自分という亡霊に翻弄されるのだろうか。
なんだかんだ言ってもやはり自分が好きなのだろう! 間違いなくそんな感じがする。
ということで今年もゴンタクレは気持ちも身体もどっかに行く! さまよい続ける!
というわけです。
年明け早々、雪深き新潟・小千谷に行ってきた。
映画『お兄ちゃんのハナビ』、昨年晩夏に一旦撮影を終えて、今回はその冬編の撮影があったのだ。
小千谷周辺は日本有数の豪雪地帯。新潟中越地震の震源地に近い場所でもある。
今年は特にすごい積雪らしいのだが、地元の方はこの程度の雪どうってことないよとケロッと言いのけたりする。雪に対してネガティブにならない……これも長い時間を過ごしての生活の教え・知恵なのだろう。といっても深いところで3mぐらい積っているんだよ。まぁいずれにしても外に出れば視360°、雪だらけ白一色の世界なのである。
さて唐突だが、皆さんは花火は好きでしょうか!?
オイラの花火体験としては、東京に出てきてからのそれではなく、やはり生まれ故郷・徳島県小松島の港まつりでの花火大会と言ったところだろうか。
両親や兄弟と出かけたあの夏まつり、遠くから聞こえてくる〈よしこのばやし〉……。
そこは徳島、自然と輪になる阿波踊り。ヤットナァヤットナァ ヨイヨイヨイヨイ……。
そして一瞬にして消えてゆく美しく淡く切ない花火。
人それぞれの思いがそこにはあるのだろう。
今回の映画の舞台は小千谷市片貝町。
そこでの〈花火〉がこの作品の大切なキーワードになっている。
片貝まつりの花火は全国的にもとても有名らしく……といってもぼくは、恥ずかしながら今回の映画出演が決まるまで知らなかった。
〈世界一の片貝の四尺玉!!〉なんのことやらという感じでしょ。
四尺とは、直径120cm。その重量はなん420kg……その信じられない巨大な花火が地上より800mの高さに打ち上げられ、直径800mの大輪の花を咲かす……ってなんのこっちゃあぁぁって感じでしょう! とにかくドデカなのである。
しかも観客はどこでその花火を見るのかといったら、なんと斜面になった広大な丘の上でゴザを敷き、そこに寝そべりながら……まさに花火を真下から見上げるのだ! これは圧巻だった!
しかも各自半透明の傘を持参し、落ちてくる火の粉を手慣れた感じで避けながらの花火観戦! しかしだぁ、この片貝花火の凄さや面白さは、そのスケールだけにあるのではなかったのだ。
ぼくたちは、夜空に上がる花火を見上げて綺麗だと思ったりする。その通りである。
しかし、ここ片貝の花火は、その一発一発に個人や家族そして仲間の想いがたくさん込められた、そこには意味があり訳もある花火なのである。わかりやすく言えば、誰かが誰かのために上げる花火と言えるのだろう。たとえばこうである。
〈亡き父に捧げる感謝の花火、オトウ! 天国から見ていてね〉
〈○子ちゃん、正式に結婚申し込みます。これはプロポーズ花火だよ! ●男より〉
〈祝誕生♡めぐみ 大きく元気に育て!〉
花火会場では、一つの花火を打ち上げる前に必ずその花火へのそれぞれの想いやメッセージが読み上げられるのだ。
そして、その度に笑いが起こり、涙が流れる。
言葉では言えない何かとても胸に迫るものがある。そして花火への想いがさらに深くなっていくようだった。
聞くところによると花火を上げるために皆さんコツコツと貯金をされるそうだ。
一年に一度、一発の花火を上げるために……愛する人のために。
映画では、若くして難病で他界した妹のために供養として引きこもりの兄が花火を上げるといった……実話に基づいたものである。決して派手さはないが、こころに届く作品になると思う。
映画はこの夏、まず新潟・小千谷市で完成披露試写会を行い、全国公開をするらしい。そして、スタッフ・出演者で今年の片貝まつりで花火を上げさせていただくことにした。もちろん映画ヒットということもあるが、撮影中、手間ヒマ惜しまず協力していただいた地元の皆さんへの感謝の気持ちを込めての花火になると思う。
当然、ぼくも片貝まつりに行く。
そして、あの広大な丘に傘を持って寝そべるつもりだ!
「音楽と人」2010年3月号掲載