ことば

COLUMN

連載2「ガッツへの愛」2000年1月23日号

「初めまして、大杉と申します」。かつて”映画俳優”と呼ばれた人々が出入りしていた東映大泉撮影所俳優控室に彼はいた。「泣けました?」「えっ」。言葉が続かない。「泣けました?脚本」。挨拶もしないでいきなりだった。「どう思う?」「ええ、はい?えっ」。ぶっきらぼうな人だなぁと思った。そして無造作に足を投げ出したままヌタッと笑っているではないか。こいつタダモノではない!「とにかくよろしくお願いします」。そう言うとぼくは自分の控室に戻った。息を整えている自分がいた。彼とこれからしばらくの間、映画の時間を過ごすことになるのだ。これが、ガッツ石松さんとの出会いだった。
 撮影の初日は大きな緊張を持つことになる。No.6スタジオにガッツさんとぼくは呼ばれ、スタッフに紹介された。彼は警備員役、ぼくは銀行の支店長役だ。2人がメーンのシーンでテストが始まった。支店長のぼくが警備員のガッツさんに近寄っていく。なんと彼は、無造作に足を投げ出したままヌタッと笑っているではないか。俳優控室にいた彼の姿が、そこにあった。控室の時からきっと彼は”警備員“だったに違いない。俳優であるガッツ石松に触れた感じがした。知りたい、もう少し彼を知りたいと思った。いい仕事が出来るかもしれない、そんな予感もした。「泣けました?」そう聞いてきた彼自身が映画「SPACE TRAVELERS>の脚本に泣いたのかもしれない。<ガッツのいい相棒になってやる>。そんなささやかな決意があった。
 数日後、ぼくらはお互いの控室を行ったり来たりするようになっていた。「ホットコーヒーを飲んでホッとする」「藤圭子の娘の職業は? うーたーだー」。オヤジも避けるようなギャグに、クランクアップのその日まできっちりとお付き合いしたのはいうまでもない。