ことば

COLUMN

連載6「Higuchinsky」2000年2月20日号

 ウクライナ生まれの30歳!本人がそう言い張っている。しかし、しゃべる言葉は日本語だし、顔はどこから見てもまぎれもない日本人だ。その名を” Higuchinsky”監督。
 ”ヒグチンスキ―”と覚えていただきたい。ミュージック・ビデオの世界では、とても有名な方らしい。そんなHiguchinsky監督が初めて映画を撮ることになり、ぼくも出演することになった。まったく予備知識のない監督と仕事するのは不安もあるが、どんな演出をする方なのかという期待の方が大きい。人と出会うことは、才能と出会うことだとぼくは考えている。
 映画「うずまき」。原作は伊藤潤二さんのコミックだ。これまでもコミックが原作になっている映画に出たことはあるが、なるべく原作を読まないようにしてきた。ぼくの仕事は、原作の模倣ではなく映画に出てくる役、つまりぼくの演じる”斉藤敏夫”のリアリティーだと考えているからだ。シナリオを読み、その人物の輪郭を想像してみる。黒ぶちメガネをかけて・・・・・・ウンウン履物は健康サンダルがいいな・・・・・・声のトーンは静かなほうが怖いかもしれない・・・・・・髪は脂っ気のないボサボサ……洋服は・・・・・・そんなことをダラダラ想像しながら、ぼくの”斉藤さん”が出来上がっていく。楽しい。
 衣装合わせの日。自前で用意したメガネを出してみた。「これ、これ・・・・・・ああ、敏夫はこれですよ」監督がそう言ってくれた。お互いのイメージが通じあった瞬間だ。衣装も立派な”オッチャン着”が用意されていた。スタッフの方が原作本を持ってきた。「漣さん、斉藤さんってこんな顔なんですよ」……うわぁ、笑ってしまうほどぼくに似ていた。帰り際、監督がこう言った。「面白いもの撮りますから」と。その後のぼくが、すっかり”うずまきオヤジ”になってしまったのは言うまでもない。