ことば

COLUMN

連載9「倒れても・・・」2000年3月12日号

 去年の12月から3カ月、三池崇史監督のドラマ「サイコ」の撮影があった。ハードなスケジュールだったが、撮影は実に楽しかった。ぼくら撮影隊は間違いなく肉体労働者だ。きついのは当たり前、ゆえに楽しさこそが現場の基本と言ってもいい。”しんどさを楽しむ”。座右の銘のような言葉が浮かんだりする。
 ぼくの知る限り日本で一番忙しい映画監督は三池崇史さんかもしれない。去年だけでも「日本黒社会」「サラリーマン金太郎」「DEAD OR ARIVE」(必見)と3本の映画が公開されている。そんな三池組の現場で待ち時間にいろんな話をした。これが実に楽しい。
 三池監督が助監督時代、睡眠時間がままならぬ現場があったらしい。少し気晴らしのためにみんなで野球をやることになった。彼のポジションはセンター。大きなセンターフライが飛んできた・・・・・・三池さんはバックする・・・・・・バックしながらその場に倒れ、倒れた状態のままグーグー寝てしまったそうだ。気がつくまでの2日間、寝続けていたらしい。「あっそうだ!ぼくも倒れたことがある」。今度はぼくの番だ。
 何本か仕事が重なり、おまけに睡眠不足、激労状態の時、撮影が始まった。違う仕事でスタジオに来ていた友人の田口トモロヲ君が、ぼくの控室来てくれて例のごとく”大いなる無駄話“で盛り上がった。特別大きなNGも出さずにその日の撮影は終わった・・・・・・らしい・・・・・・が・・・・・・記憶がない!撮影のこともトモロヲ君のこともまったく覚えていない。気がついた時には左手に点滴があった。
 三池さんもぼくも無邪気に笑った。「2人とも、子どもの自慢話じゃないんだから・・・・・・」、スタッフがぼくらをからかう。「監督、準備ができました」。助監督さんが言う。ぼくらの待ち時間は終わった。瞬間、スタジオの空気が”緊張の時間“に変わっていく。