ことば

COLUMN

連載13「ファンクラブ会員NO.0」2000年4月9日号

「元気か?最近テレビ出てないけど、仕事あるんか」「ああ、いつも通り仕事はしてるから心配せんとき」「そんならええけど・・・・・テレビ出る時は教えてな」「うん、わかった」
 徳島の母からの電話だ。ぼくの出ている映画が、残念ながら地方でなかなか公開されないものだから”息子は仕事しているのだろうか”と心配なのだろう。
「あのな母さん、仕事はボチボチやってるから」。母は「ああ・・・・・・そうか」と不安そうに答えた。心配は”親の領分”なのだ。
 考えてみると、俳優としてやっていこうとするぼくをいつも遠くから見守ってくれたのは母だった気がする。映画やテレビで本当に小さな役で出演しているときでも「お前が一番よかったわ」と言い続けてくれたのは母だった。
 昨年、サブ監督の「ポストマンブルース」を故郷・小松島市で上映した。以前は3軒あった映画館も姿を消し、ホールでの上映だ。映写技師の方も徳島市から来ていただいた。観客の多くは町の高齢者の方。はたして“サブ疾走ワールド”は、どんな受け入れ方をされるのか・・・・・・
ぼくとしては、地方で上映されないインディペンデントな作品をぜひ大きなスクリーンで味わっていただきたいと考え、この作品を選んだのだが。結果、爆笑と涙で終えることができた。その中に今年84歳になる母の姿もあった。上映後、楽屋を訪れた母は、ていねいにたたんだ1万円札をぼくに握らせた。子供にお小遣いをあげる母親のように、48歳になるぼくに1万円を渡したのだ。そしてこう言った。
「映画、むちゃくちゃ面白かったなあ・・・・・・そやけどやっぱり、お前が一番良かったわ」
 そして今年、崔洋一監督の「犬、走る/DOG RACE」を上映することになっている。多くの方が映画を心から楽しみに待ってくださっている。その中に母の姿があるのは間違いない。