ことば

COLUMN

連載39「恥を知る」2000年10月22日号

 ある映画雑誌で「大杉漣と遊ぼう」という特集をしてくださるというので、インタビュー取材を受けた。編集の方が別れ際に、 
 「大杉さん、今回の雑誌発売を楽しみにしていて下さいね。企画がね……ケッケッ」
 「企画って、なんですか」
 「いやあ、それはね・・・・・・クックックッ」
 思わせぶりな笑顔は、なにを意味しているのか。気になる!
 そして、その雑誌が手元に届いた。ぼくのインタビュー記事は予定通り2ページで構成されていた。しかし、次のページにはもう一つの特集が組まれていたのだ。それが、あの思わせぶりな笑顔の中身だった。
 特集「大杉漣と遊んだ監督たち!」。<あなたにとって、大杉漣とはどんな人ですか?>
 17人の監督の回答がそこにあった(少し長くなりますが、一部を抜粋させていただきます)。
 <空気を敏感に察知するペースメーカー・小松隆志>
 <不思議な先見の明がある人・中田秀夫>
 <気配りの人・SABU>
 <たいへんうまくできました・新藤兼人>
 <欲深きさびしがり屋な人・福岡芳穂>
 <ひょっとしたら指紋がないかも?な人・合津直枝>
 <アッ!な人・山川元>
 <いつもα波が出ている人・落合正幸>
 <冒険者の味方・三池崇史>
 <自在変化で一人オムニバス、あったかくてクールな人・阪本順治>
 <面白い映画を探すバロメーター・本広克行>
 <浮気な人・北野武>
 <いつまでも子供心を忘れない、好奇心旺盛でアクティブな人・Higuchinsky>
 <かっこいい人・是枝裕和>
 <シャイな人・井坂聡>
 <アバンギャルド精神に貫かれた人・黒沢清>
 <SM.バート・バカラック.ブルーハーツな人・廣木隆一>
 (順不同・敬称略)
  ぼくの頭の中で17の姿が右往左往している。
  「大杉、恥を知れ!お前はそんな立派な人間じゃない」
 ぼくがぼくに食ってかかる。
 夜の窓にジャージー姿の自分を映してみた。そして、ふと思った。「マルコヴィッチの穴」よろしく「大杉漣の穴」というものがあるとすれば、その中に入る最初の訪問者は、ぼく自身だと。
 ぼくは、遊び続ける!