ことば

COLUMN

連載50「ウーン、とうとう」」2001年1月7日号

 この連載も今回が最終回になりました。とにかく一年間書き続けることを目標にやってきたのですが、そんなささやかな目標でも実現していくことがどれだけ大変だったか、身をもって思い知らされた感があります。
 俳優にとっては演ずることが表現になるわけですが、映画やテレビの現場で経験したことや感じたことを、書くという作業で言葉に置き換えることは、演ずることとは別の<しんどさ>があったように思います。
 もちろん演ずることと書くことは、表現方法として質の違うものです。しかし、どのような表現をすれば自分にとって一番いいのか、それを求める気持ちは同じだと感じました。書きながら「ああっ、ぼくはこんなことを考えているんだ」と、思いもよらぬ発見があったりもしました。
 日々、現場を渡り歩いているぼくにとって、書くことは<しばし立ち止まる自分の姿>だったのかもしれません。
 ぼくにとって映画は<やるもの>であって<語る>ものではありません。ぼくは、自分のことを現場者(げんばもん)と呼んでいます。呼ばれればどこにでも出かけていく、それがぼくの仕事の流儀です。
 連日の深夜に及ぶ撮影で寝ながらレフ版を持ち続ける照明マン、カチンコがうまくたたけなくて監督から怒られてばかりの助監督、不器用でも懸命に演じることと戦う俳優……いつまでもそちら側の人間として、ぼくはいるつもりです。
 今年のベストテンを選んでくださいという依頼は、そのほとんどを断りました。ぼくにとって何の意味もないことだからです。現場でどんな時間を過ごすことができたのか、そこで何を感じとったのか。そこにこそ俳優としてのリアリティーがあるとぼくは考えています。変わらず映画の中をさまよい続けます。
 最後に、拙いぼくの文章に手を加えることなく掲載していただいたサンデー毎日編集部の皆様、そして連載担当の篠塚郁子さんの励ましや助言なくして、一年間の完走はありませんでした。心から感謝します。2001年、みなさまにとって良き年にならんことを祈りつつ!